魔物の手から離れるため、よろめきながら前に進んでいたソウシは、ウエストポーチを探って懐中電灯を取り出した。土地勘もないのに闇雲に走って、いつまた崖っぷちから落ちるかもしれないのだ。ライトを点け、左足も全身の傷の痛みも忘れて、ただ前進した。
さっきまで聞こえていたかすかな水の流れる音がよりはっきりと聞こえてきた。道に沿って川が流れているのだろう。後ろは振り返らなかったが、背後に感じていた魔物の気配が薄れていくのを感じた。
浄めの塩が少しでも効いたのだろうか。
だが、油断はできない。あれは霊体であって、どこに出没するかわからないとソウシは緊張しながら前に進んだ。上りの勾配がきつくなってきて息が切れ、ときにつまずいてよろけながらも、立ち止まることはできなかった。
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ジャンル : 小説・文学
テーマ : 自作小説